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December 21, 2004

わが家の犬は世界一

「CALA,MY DOG!(英題)」(2003/路学長)
(原題は「▼拉是条狗」▼は峠のつくりのような字、▼拉でCALAと読む)

がんばれお父さん!愛犬を救うために!家族の愛を取り戻すために!

新宿武蔵野館にて、2005年G.W.ロードショー

cala.jpg

これ、面白い。オススメです。

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ある晩、妻が犬の散歩をしていた時、警察に一家の愛犬カーラを没収されてしまう。翌日の午後4時までに警察で許可証を作らねばカーラは処分されてしまう。しかし、許可証はとても高額。誰よりもカーラを大事にしている夫は、カーラを取り戻す為、東奔西走する。

いわゆる動物ものではない。動物は沢山出てくるが、演技はしない。動物を扱う人間達を描いた“喜劇”。喜劇ゆえ、体制批判に満ちている。

一家は犬を取り戻すために様々な行動を取る。コネを使ったり、お金を工面したり、許可証を偽造したり、裏ルートに当たったり。そうしている内に、主人公の姿、一家の関係性、周囲の人々が少しずつ明らかになり、また彼等の抱える問題、そして中国の現在が浮き彫りにされていく。

主人公が工場労働者であって、徹底した中産階級であるのがポイント。決して周囲に対して批判めいたことはしないが(妻への文句も公衆トイレの中で独りぼやく始末)、それゆえ世界の矛盾、不条理を徹底して浴びる。まさに現代の「阿Q正伝」、「ドン・キホーテ」。

ペットを探すうちに様々な人に出会うという筋立ては決して珍しくない。「猫が行方不明」(1996/セドリック・クラピッシュ )なんか、そっくり。しかし、この「わが家の犬は世界一」という作品の特色は、その喜劇性を、喜劇の発祥宜しく、世の矛盾、不条理を描くことに費やしていることであろう。それを無視したら、この映画の面白さ半減。ペットを救うことが主眼なら、あんなぶっ飛んだラストはあり得ない。

しかし、難しく考えないでね。飽くまで喜劇だから、見ていて率直に面白く、笑える。ただ「面白い」で済ますには、あまりに勿体無い。この映画で様々な事が学べる。

それにしても、中国映画は面白い。次々に刺激的な作品を生み出し、素晴らしい作家が登場する。良く、文化的に未熟で国政が不安定な方が方が良い映画が創れるという話しを聞く。だから日本は映画を創れなくなったのだと。確かに、アジア諸国など、問題意識が高く、映画の社会的な役割も大きい。しかし、それって本当か?日本が文化的に成熟しているとは思えないし、この国の行方は甚だ不安だ。そういうことではなく、必要なのは表現への純粋な渇望だと思う。逆に言えば、文化的に死んだら映画は撮れないということ。一般論としてね。言い換えれば、中国には表現しよう、アピールしよう、変えていこうという野心が満ちている。韓国もね。アジア諸国にも。

別に隕石が落ちて来なくても、レインボーブリッジが封鎖されなくても、面白い映画は撮れる。大事なのは、日常に対する眼差し、感受性、積極性、そしてそれについて考察する知識と想像力と行動力だと思う。

いまの中国の普通な人の当たり前の生活を描いた「わが家の犬は世界一」は、とっても面白くオススメです。俺の明日を少し豊かにする、そんな映画。


投稿者 井川広太郎 : December 21, 2004 09:21 PM  [ 映画REVIEW]

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