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December 03, 2004

5nights&6daysァ

10月02日土曜/5−7−11

15:00 「5five〜小津安二郎に捧げる〜」アッバス・ケアロスタミ

お次の目的地である上映会場はPacific Cinemateque。この名前を聞いてピンと来た人は凄い!ここは2年前「眠る右手を」を上映した所である。ああ、懐かしい!

で、観る作品はアッバス・ケアロスタミの作品。(一般には“キアロスタミ”と表記することが多い様です。)この人も最も尊敬する映画監督の一人。いや、俺みたいな若造が尊敬するのもおこがましいくらい、偉大なリビング・レジェンド。彼はイランの映画監督であるのだが、伝説には事欠かない。子供が泣くシーンを撮るためにフレーム外で子供の足をツネッたとか、子供が困惑する顔を撮る為にカメラの前に1日中立たせたとか、とにかく神話的な彼の作品には、可笑しなエピソードがまとわり付く。

生涯で最初に観たケアロスタミの作品は「クローズ・アップ」。あまりの衝撃的な面白さに彼の虜になり、その作品が撮られた経緯を知って、ますます興味を持つ様になる。その撮られた経緯というのは彼の全ての作品にオマケとして付いているような類なのだが、その狂気に満ちた映画愛というか鬼のような常軌を逸した制作姿勢は、本当に刺激になった。ともあれ、作品の面白さときたら、それはもう強烈なのだ。

次に観たのが、「友だちのうちはどこ?」「そして人生は続く」「オリーブの林を抜けて」の所謂、“ジグザグ道3部作(地震3部作)”。どれも忘れ得ぬ傑作なのだが、特に「そして人生は続く」は、そのタイトルも含めて、俺にとってとても大事な一本です。

「トラベラー」「パンと裏通りも」からは、映画を創る姿勢について本当に色々学んだ。お金を掛けなくても、こんなに面白い映画が撮れる!というショックは当時の俺にとって、とても大きなものだった。近年の「桜桃の味」「風が吹くまま」も日本公開時に嬉々として劇場に走った。観た後は俺も周囲もケアロスタミを話をツマミに酒を呑みまくった。「ケアロスタミの映画とは曰く“忍耐と奇跡”だよ!」なんて言って、その言葉を支えに学生映画に励んでいた。

そんなケアロスタミの作品である。襟を正して観なくちゃいけません。ましてや、今回の映画は“小津”に捧げているらしい。嫌が応にも真剣に観なければ!

劇場に着くと、やたらとスカーフを巻いた人が多い。というより観客のほとんどが中東系の人だ。で、気付いたのだが、このバンクーバー国際映画祭は、多国籍なバンクーバーという街にあって、様々な国の映画を“カナダ人”に提供するというだけでなく、在住する他文化圏の人々のホームシックを和らげるという機能もあるのだ。素敵。

席に着いて上映を待っていると、横にチャイニーズの女の子が座る。や、否や、日本の役者さんですよねと英語で話しかけて来る。昨日、あなたの作品観ました!と言っている。いや、俺は日本の映画人だけれど役者じゃないし、俺が撮影した映画の上映は今晩だよと言うと、残念そうな顔をしながら、それを観に行くと言う。どうやら彼女は、俺を田口トモロヲさんと勘違いしたらしい。とっても光栄だけれど、なんか凄く恐縮…

彼女はVIFFの“フリーパス”を買っていて、それがあると俺達の“ゲストパス”同様、ほとんどの上映に入れるらしい。しかし値段は数万円するとか… 彼女は映画学校で学んでいるらしい。映画を学ぶなら、やっぱケアロスタミは観なくちゃでしょ!というわけで上映が始まる。俺はガチンコで映画観るぞモードに入る。

「FIVE DEDICATED TO OZU」(2003/Abbas Kiarostami)
15分程度のフィックスの映像が五つ、順に映し出される。波打ち際を転がる木片。海岸沿いの道を歩く人達。砂浜で寝る犬の群れ。砂浜を行進するアヒルの群れ。池に映った満月が雲に隠れたり嵐が来たり。それだけ。

上映中、一つの映像が終わる度に観客が帰っていく。最終的には半分もいなくなった。実際、退屈で不可解すぎる。アンチハリウッド的に、命を初めとする森羅万象の輪廻を描いたのかもしれないが、“忍耐と奇跡”というお守りを心の中で繰り返し呟いていた俺でも辛かった。実際、どれも美しい映像だし、思い起こすと体験として素晴らしく味わえるので、観たのと観ないのでは矢張り違うのだが、これを観ろと言うのはあまりにも過酷で暴力的だ。笑いも、悲しみも、怒りも、楽しさもあるのだが、間口はあまりにも狭い。他の方法もあるのではないだろうか。DVで撮るということが嬉しくて、意地悪でこんな映画を撮ったのではと、神の人の思召しを疑う。

17:00 7イレブン

さすがに草臥れる。何もかも嫌になってホテルに戻りたいと思う。しかし、腹が減った。そうだ、行き掛けに見掛けたセブン・イレブンに寄って食い物を買って帰ろう。

セブン・イレブンは概ね、日本と一緒。違うところは、店舗の大きさ、陳列している商品の色合い(欧米の色使いは往々にして派手な原色系が多い)、店員がフランク、そして店内中央に巨大なコーヒー・セイバーがあることだ。

バンクーバーの人は本当にコーヒーが好き。そういえばお隣街のシアトルもコーヒーのメッカ。バンクーバーでは街中そこらでコーヒーを売っているし、その全てがちゃんと煎れたもの。缶コーヒーなんて勿論ない(少なくとも俺は見た事無い)。ちなみに各上映会場にはスターバックスの出張店舗が出ている。また、ホテルの各部屋には、簡易コーヒーメイカーが置いてある。豆を挽いた粉がフィルターに袋詰になっている。毎朝、豆を引いてコーヒーを煎れないと目が醒めないというコーヒー党の俺にはバンクーバーは天国だ。

で、セブン・イレブンで例の“北米サイズ”のサンドイッチを買う。さっさとホテルに帰ってコーヒー煎れて食おう。

17:30 ホテルに戻る

…おかしい。鍵が開かない。カードキーを差し込んでも、エラーの表示が出る。朝、出た時は異常なかった。まさか、白川監督が外出する際にでも壊れたのだろうか。にっちもさっちも行かなくなって、ホテルのフロントに行く。

例の巨漢の感じ悪いボーイなら嫌だなあと思っていたら、小柄で気の良さそうなボーイだった。良かった。カードキーがエラー表示になる旨伝えると、そりゃ、カードの使いすぎで磁気が弱くなったんだよ!この新しいキーをあげるよと別のカードキーを渡される。使いすぎって、まだ、数回しか使ってないけど… 半信半疑のまま再び自室のドア前に立ちトライするも、矢張りエラー表示が出る。弱ったな。

フロントに戻り、やっぱり駄目だったと伝える。よっしゃ!オレっちが行くよ!とボーイも一緒に来る。で、三度、自室のドアと対面。ボーイは何やら新しいカードキーを取り出す。いいかい?よ〜く見てなよ!これが魔法さ!1、2、3!!とカードキーを差し込む。やっぱりエラー表示が出る。

ボーイは俺に、中には誰もいないかいと聞く。最初、鍵が開かなかったときノックしても返事なかったし、白川監督が未だに部屋にいるとは思えない。いや、いないはず。と応える。すると困った表情を浮かべながら、ボーイはどこかに電話をかける。呼出音が続く。なかなか出ない。やっと誰かが出る。するとボーイは俺の方を見てニヤリとする。「あなたのお連れ様が困っているので鍵を空けてもらえます?」と言うボーイ。へ?

ドアの鍵がガチャリと鳴る。扉が開く。ドアを空けたのは眠そうな表情の白川監督であった。をいっ!どうやら白川監督はオートロックの構造を知らず、俺が外出した後、さらに手動式の鍵を内側から掛けていたらしい。そりゃ、空かないわ。

ニヤニヤ笑うボーイに面目ないと平謝りする俺。何事か事態が把握できないままの白川監督は再び(三度?)眠りについたのであった。


投稿者 井川広太郎 : December 3, 2004 12:03 AM  [ バンクーバー2004(更新終了)]

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